「聞いとくんなして」:”どうぞお聞きになってください”【北信州の方言】
”言う”、”話す”、”喋る”
基本活用は、「せわない、せいます、せう、せうとき、せえば、せえ」だが、変格活用が多い。
「せったかせわねかせってみろ」
(言ったのか、言わなかったのか、言って見ろ)
「せえばせったで、せったせってせうし、せわねばせわねで、せわねせったせう。だからおらせう。」
(話したなら話したで「話したと言いました」と言うし、話さなかったら話さなかったで、「話さなかったと言いました」と言う。だから私は話します。)
”お先に失礼します”、”さようなら”
別れる際の標準の挨拶です。
北信州の学校や職場では、昼夜関係なく、上司や先輩に「お休みなさい」といって帰る。
上司や先輩は「おやすみー」と声を掛けて先に帰る。
昼間から”帰って寝る”といっているのではありません!
共通語で「(物を相手に)あげる」「与える」「やる」のこと。
赤ん坊に授乳することを「ぼこに乳くれる」という。
犬や猫に餌を与えることを「餌をくれる」という。
花や野菜に水やりすることを「水をくれる」という。
小学校で栽培している花に水をやる当番を「水くれ当番」と呼んでいる。
『ことばおじさんの 気になることば』という番組で紹介されました。
自分が住む方角や所属する地区・団体などを示すことば。
おらほの村、おらほの山、おらほの子ども、などと使います。”俺の方”から変化した?
”おらが○○”という言い方はしません!
信州・東部町(2004年4月1日から東御市)には「OH!LA!HO BEER」という、国際ビール大賞金賞に輝くビールがあります。
作家の玉村豊男さんが「おらほ」をヒントに命名したとか。
地ビールのお好きな方は「アグリビレッジとうぶ」さんへどうぞ。
”ありがとうございます”
お客様に対するお礼のことばとして普通に使われる挨拶方言。
この方言をご存じないお客様(当たり前ですが)からは、「お客に対して、ありがとーとはなんだ。お客に接する態度が悪い」と叱られてしまう。
一方、生真面目な信州人はちゃんとお礼を言ったつもりなので、お客さんと喧嘩になる!
「ありがとー」は、共通語ではお客様や目上の人に使う挨拶として認められない(らしい)、ということを誰も教えてくれない(知らない)ので、「ごくろうさまでした」と並ぶ信州の不作法挨拶の代表です。
ありがとう:(アリガタクの音便。下の「ございます」「存じます」の略された形) 感謝の意をあらわす挨拶語。「まことにありがとうございます」広辞苑
”お疲れ様でした”に”ありがとうございました”が少し混じった感じ。
信州では目上の人に対して「ご苦労様でした」といって苦労をねぎらい、(少し)感謝します。
信州のある会社で、信州人ではない上司が帰るとき、信州人の部下が「ご苦労様でした」といったら、「上司に向かってご苦労様とは何事だ」と上司に叱られました。部下は何で叱られているのか判らず、上司不信になったという話があります。
若い人は「お疲れさま」という挨拶を交わすようになってきましたが、違和感を感じる年寄りはまだ多いようです。なにしろ、ずっと昔から「おつかれー」という挨拶は「今晩は」という意味で使われてきたのですから。
ごくろうさま:「ごくろう」を丁寧にいう語。「遠いところをごくろうさまです」上に戻る
ごくろう:他人の苦労を敬っていう語。また、他人の骨折りをねぎらっていう語。他人の無駄な骨折りをあざけってもいう。「この雨に出かけるとはごくろうなことだ」。広辞苑
自分 | 相手 | |
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一人(単数) |
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二人以上(複数) |
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家(うち) 家族 |
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|
方角、所属など |
|
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この必須2大方言が理解できないと、休憩なしでずっと働き続けるはめになるので、ご注意!
”・・・しましょう”
「一服せ(し)ず」、「飲まず」、「食べず」「止(や)めず」
”一服(一休み)しよう”、”飲もう”、”食べよう”、”止めよう”という意味です。
共通語で「飲まず食わず」といえば何も口にしませんが、北信州では全く逆になります。
昔のことば使い「○○むとす」が、「○○むず」→「○○ず」と変化してきたのだそうで、女性も使いますが、どちらかというと男ことばです。
※古い人がよく口にする”信州のず弁”は下で説明します。
”・・・しましょう”
「やすみない」、「食べない」、「飲みない」、「止めない」
”休みましょう”、”食べましょう”、”飲みましょう”、”止めましょう”という意味です。
「○○なさいな」が省略されて「○○ない」に変わった?
「○○たい」(【た】が上がり、【い】は下がる)もほぼ同じで”○○しましょう”という意味です。
女性が主に使うことばで、男性はあまり使いません。
字だけ見ると、全く逆の意味に取れますが、発音は微妙に違います。
上に戻る”○○しますよね?”という意味。「○○するしねかい?」とも言う。
「お祭りにはごもくご飯するしない?」(五目ご飯をしますよね?)
「公会堂の掃除は男しょも窓拭きぐらいするしねかい?」(男性も窓拭きぐらいはなさいますよね?)というように使う。
はじめて聞くと、するのかしないのか判らず、悩んでしまいます。
書かれた文字を見ると、もっとわからなくなります。
北信州の若い人もよく使う表現で、都会に出て共通語ではないと気がつき、愕然とする言葉です。
FM長野の人気番組だった「タブロイドラヂオ Let's 午前中!」さんの選定です。
詳しくは大岩堅一さんと加瀬清志さんがお書きになった「スタヂオの窓から信州が見える」(信濃毎日新聞社出版局刊)をご覧ください。
「ずく」を出してがんばっている人を「あの人はずくがある」と誉めます。
「ずく」をださないことを「ずくをやむ」といいます。
「ずく」をやんで何もしない人を「ずくなし」といいます。
FM長野の大岩アナウンサーは「ずく」を「その気」と翻訳していました。ことばで仕事しているだけあって、いい感覚してますね。
ずく:ものごとに立ち向かう気力や活力、勇気などを表す長野県の方言。 信濃毎日新聞
ずくがない【ずくが無い】: (物事をする)気力がない。おっくうである。
ずくなし【ずく無し】: 役に立たない者。怠け者。不精者。 広辞苑
”前”のこと。
信州人は「前」のことを「まえで」といいます。訛ると「めえで」になります。
「横手(よこて)」「後ろ手(うしろで)」ということばがあるので、昔は「前手」ということばがあったのでしょうか。
よこて:横に当る方向。わき。
うしろで:うしろの方。うしろから見た姿。うしろつき。広辞苑
りんごや梨などのくだものが軟化すること。
信州・安曇野出身の乙葉ちゃんが「好きな物は、ぼけたりんご」といったので全国的になったと、大岩アナウンサーが喜んでいました。
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