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『紫式部日記』
九日、菊の綿を兵部のおもとの持て来て、「これ、殿の上の、とり分きていとよう、老拭ひ捨て給へと、のたまはせつる」とあれば、
「菊の露わかゆばかりに袖ふれて花のあるじに千代はゆづらむ」
とてかへし奉らんとする程に、あなたに還りわたらせ給ひぬとあれば、ようなさにとどめつ。
(藤原道長の妻・綸子が「あなたもだいぶ年なのだから、よくよく着せ綿を使って老いをしっかり拭き取りなさいよ!」とメッセージつきで菊の着せ綿を紫式部に送ってきたのに対して、
紫式部は「私はあなたと違って若いから、そんなの結構よ。着せ綿は、本当にそれが必要なあなたにこそお返ししましょう。」と突っ返そうとしたけれど、もう帰った後だったので放置した。)
【言葉の泉】より
きくのきせわた【菊の被綿】
菊の花に綿をおおいかぶせたもの。重陽(ちょうよう)の節句の行事で、前夜、菊の花に綿をおおって、その露や香を移しとり、翌朝その綿で身体を拭うと長寿を保つという。 きせわた。きくわた。きくのわた。
きせ‐わた【着せ綿・被綿】
〔植〕シソ科の多年草。高さ約80センチメートル。茎は四角、葉は楕円形で縁に粗い切れ込みがある。 秋の初め、上部の葉腋に淡紅色の唇形花が群がって開く。
【広辞苑】