久保の家
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北信州のはなしことば 「さ行」

「さ」(11) 「し」(35) 「す」(15) 「せ」(11) 「そ」(12)

おことわり:ことばの解釈や用法、語源などは、あくまでもこのページの管理者が勝手に判断したもので、学術的な根拠に基づくものではありません。説明が不適当だったり、間違っているものがありましたら、ご容赦ください。

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「さ」

「ざい」
”いなか”のこと。反対は「おまち」
ざい【在】:都会から離れた地方。いなか。広辞苑
「さかる」
”繁盛する”という意味。「盛る」
「あの店はさかってるなあ」(繁盛しているなあ)
「・・・先たって」
”・・・の直前に”という意味。
「行く先たって着るもんねえせったって間に合う訳ねえ」(出かける直前に洋服がないといっても、間に合う訳がない)
「ささらほうさら」
”いいかげん”、”適当”
夜来風雨声「一夜さにさくらはささらほさら哉」一茶
一茶の句を見ると、”ちらほら”、”ぽつりぽつり”という意味かもしれない。
「さっそく」
仕事は早いが、仕上がりは今一つ、というようなときに使う。
「まてい」の反対。
意味は”拙速”に近いため、”早速”と混同されたものか?
「さびぃ」
”寒い”の訛った「さぶい」が、寒くて口が開かなくなり、短かくなった。
(震えながら)「あ〜〜〜さびぃっ!」(あ〜〜〜寒い!)
「さぶい」
”寒い”が訛った。「さびい」ともいう。
「されっかまんどく」
”放置する”、”放っておく”といった意味。
「さわぎ」
「騒ぎ」。”大変”という意味で使う。「さわぎだなあ」(大変だなあ)
”とても大変だ”というときは「えらっ騒ぎ」という。
さわぎ:さわぐこと。さわがしいこと。また、人々を騒がせるような事件。混雑。取りこみ。「騒ぎが起きる」「けんか騒ぎ」。広辞苑
「さんざ」
”もう十分”とか”もう沢山”という意味。
さんざおごっつぉになった」(もう十分ご馳走になりました)
「おやじの小言はもうさんざだ」(おやじの小言はもう沢山だよ)。
さんざ:「さんざん(散々)」の略。甚だしく。したい放題に。広辞苑
「さんだす」
差し出して手助けすること。「差し出す」が訛った。
稲刈りしてはぜ掛けをするとき、稲の束を取り上げて2つに分け、はぜ掛けする人に「さんだす」と仕事がはかどる。
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「し」

「じいやん」
”お爺さん”のこと。親しいと「じやん」になる。→「ばあやん」
「しかけ」
”大変”という感じ。
たんぼの中でバレーボールをしているのをテレビで見て、爺ちゃんが「しかけだなあ」と感心していた。
「しぞくねる」
”為損なう(しそこなう)”が訛った。「しぞこねる」ともいう。
しそこなう:しそんずる。やりそこなう。しくじる。広辞苑
「したっか」
”下側”のこと。”したっかわ”から変化した?
「したる」
暖かくなって積もった雪の量が目に見えて減ることを「したる」あるいは「しとる」という。
「今日はのふてかったんで、がげ下の雪がずっとしたった」(今日は暖かかったので軒先の雪の量が大変多く減った)
「じっく」
ずぶ濡れになった様子。もっとひどいと「じっくっく」。
「ぐっしょり」、「びっしょり」と同じ。
「しっこ〜ぉ」(【ぉ】を上げる)
”するわけないでしょう”という意味。
「普段勉強なんかしっこ〜ぉ」(普段勉強なんかするはずないでしょう)
「しとらよもて」
”ずしりと重たい”という意味。
赤ちゃんを抱き、見た目よりもずっと重く感じたときなどの表現。
一般的なことばかどうかは不明。
「・・・しなし」
”・・・しなかったですよ”という意味。
「おらそんなの見ぃしなし」(私はそんなの見なかったですよ)
「餅なんか食べしなし」(餅なんか食べていませんよ)
「しにっぱれかく」
”死ぬ思いをする”。”死ぬほどひどい目に遭う”。
「・・・しね」
”・・・しませんよ”という意味。
「おら菓子なんか食べしね(私はお菓子なんか食べませんよ)」
「酒なんか飲ましね(酒なんか飲みませんよ)」
「じばん」
”襦袢(じゅばん)”が訛った。
「・・・しま」
”・・・しながら”。
「歩きしま食べるなんて、今わけえもんは行儀が悪い」(歩きながら食べるなんて、今の若い人は行儀が悪い」
「二宮金次郎は、本読みしま焚き物しょって歩いた。」(本を読みながら焚き物を背負って歩いた)
「じみ」
”蝉(せみ)”のこと。
「しみる」(【み】を上げる)
”凍る”こと。「凍みる」。
「水道管が凍みて破裂した。」
しみる:こおりつく。寒さでちぢみあがる。また、身がひきしまる。広辞苑
「しめし」
”おむつ”のこと。「おしめ」。
しめし【湿し】: 小児の大小便をしませて取る布。おしめ。むつき。広辞苑
「しゃがしゃがする」
”おどおどする”
「しゃっぽ」
”帽子”のこと。
シャッポ【chapeauフランス】: つばのついた、多くはラシャの帽子。また、単に帽子。シャポー。広辞苑
「しゃばじょー」
”あたり一面”、”そこら中” 「しゃばじょー(そこら中)草だらけでこまったもんだ」
「娑婆中(しゃばじゅう)」が訛ったらしいが、「娑婆中」ということばが広辞苑に見あたらない。
「しゃる」(【しゃ】が高く【る】を下げる
”さがる”、”戻る”
「坂道で車停めたら後へしゃった」(車が後へ下がった)
「・・・・しゃる」
”・・・・しなさる”という敬語表現。「・・・・なる」「・・・・らる」と同じ。
「こらしゃる(お出でなさる)」「たべらしゃる(お食べなさる)」「けえらしゃる(お帰りなさる)」「いかしゃる(お行きなさる)」
「・・・・しゃる」「・・・・なる」「・・・・らる」という敬語表現を身内に対しても使うのが、北信州のことばの特徴の一つ。
「しょう」
荷物を背負うこと。漢字では「背負う」。
赤ん坊を背負うのは「負う(おぶう)」という。
しょう:(セオウの転) せおう。広辞苑
「しょうしい」
漢字では「笑止い(しょうしい)」。「笑止」(恥ずかしく思うこと)から変化した。
しょうしい:(東北・信越地方で) 恥かしい。おしょしい。広辞苑
「しょぉ」(【しょ】が高く【ぉ】を下げる)
”人たち”。”衆”が訛った。
「あっちのしょぉは集まったかい」(あちらの人たちは集まりましたかねぇ」
「〜じょお」
”〜中(じゅう)”が訛った。
「たまに力仕事したもんで体じょおいて」(たまに力仕事をしたので体中が痛い)
「しょおてえなし」
疲労や泥酔で前後不覚になり、何も覚えていない状態。”正体無し”が訛った。
「しょおねえもんだ」
”まったくどうしようもないものだ”とか”仕方がないなあ”と、怒ったり嘆いたりするときに使う。
「昼間からテレビばっか見てしょおねえもんだ。ちったあ手伝え!」
(昼間からテレビばかり見ていて、どうしようもないな。少しは手伝いなさい!)
「じょおや」
”いつも”、”しょっちゅう”。
じょおやお世話さんでござんす」(いつもお世話になります)
「しょっぺなす」
いたずらして暴れること。暴れる人は「しょっぺなし」。
「じょんさ」
”巡査”が訛った。
「じょんじょんに」
”順々に”
「じゅ」は発音しにくいらしく「じょ」や「じ」になることが多い。
「じんいち」さんと呼んでいた方が亡くなって葬式に参列して、故人が「じんいち」さんではなく「じゅんいち」さんだったことを初めて知った。
「しんがらかく」
片足でけんけんすること。「ひんがらかく」ともいう。
「しわつく」
”雨がしとしと降る”こと。
「朝からしわつくんで、さびこと」(朝から雨がしとしと降るので寒いこと)
「しんと」
”芯”、”中心”のこと。
「〜しんね」
”〜しれない”、”〜でしょうねえ”という意味。
「水中の桜はもう咲いてるかしんねなあ」(もう咲いているかもしれませんねえ)
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「す」

「すいこ」
”スイバ(酸葉、すかんぽ)”のこと。
先を折って皮をむいて食べる、子供の素朴なおやつだった。
「ずうてえ」
”図体(ずうたい)”が訛った。
「すげえだんかい」
”すごいものですねえ”と感心する。
「水中の桜も有名んなって映画にでたせうだんかい。すげえだんかい
(水中の桜も有名になって映画に出たというそうですね。すごいものですねえ)
「すける」
”助ける”、”手助けする”こと。
「はかいってねみたいだからすけてやらず」(はかどっていないようだから手助けしてやりましょう)
「スチロパール」
”発泡スチロール”のこと。
長野市の「長野スチロパール」という会社が発泡スチロール製品をつくっていることから一般名称化したらしい。
「すつもつ」
”もじもじ”する様子。
「ずで」(【ず】が高く【で】を下げる)
否定的に”まるで”。
「今日のゲートボールは、ずで調子悪くて、ちっともゲート通らねかった」などという。
さらに程度が増すと「ずでこで」という。
「ずでこで」
”まるっきり駄目”という意味。
「今年は雨降らねかったんで山の茸はずでこでだな」
(今年は雨が降らなかったので山の茸はまるっきり不作だなあ)
「すてばて」
”おてんば”、”あばずれ”といった感じ。
すてばて娘」(お転婆娘)
「すべっけ」
”滑っこい(すべっこい)”が訛った。
”なめらか”、”すべすべしている”
「この餅はよく搗けててすべっけなぁ(なめらかだなあ)」
「すっぺこっぺ」
お金をかけた割に利益が上がらなかったこと。収支とんとん、といった感じ。
「今度の仕事はすっぺこっぺで、ちっとももうからねかった。」(今度の仕事はとんとんで少しも儲からなかった)
「すべらっけ」
「すべっけ」と同じ。
「すま」(【す】が高く【ま】を下げる)
”隅(すみ)”が訛った。「すまっこ」ともいう。
「知らねもんばっかでしょうしかったからすまで小さくなってた」
(知らない人ばかりで恥ずかしかったから、隅で小さくなっていた)
「ずるかる」
”ぶらさがる”。「ぶるかる」も同じ。
ぶらさげるときは「ずるける」という。
「するし」
”印(しるし)”が訛った。
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「せ」

「せえきれる」
”息が切れる”。
「雷鳴ったんで畑から飛んできたんでせえきれた
(雷が鳴ったので畑から走ってきたので息が切れた)
「せえふ」
”財布(さいふ)が訛った。
「せっこいい」
段取りや手際よく仕事をすること。
「せっちく」
背が低いこと。「背がちくさい」(背丈が小さい)から変化した。
「せつない」
”悲しい”、”苦しい”、”つらい”が入り交じった感情。
せつない:圧迫されて苦しい。胸がしめつけられる思いでつらい。広辞苑
「せっぺせっぺ」
”やっとのことで”、”精を出して”といった意味。
「せせる」
からかうこと。
「隣の家のぼこがあんまり可愛いんでせせったら(からかったら)泣き出した」。
せせる:もてあそぶ。からかう。広辞苑
「せばい」
”狭い(せまい)”こと。大昔のことばがあまり変わらないで残っているものの一つ。
せばし:(江戸時代以後「せまし」となる) 広くない。幅がゆるやかでない。万葉集6「大埼の神の小浜はせばけども」広辞苑
「せわしゃった」
”おっしゃった”という意味。
「せう(言う)」の尊敬表現「せわしゃる」の過去形。
「せわった」
”言いなさった”という意味。
「せう(言う)」の尊敬表現「せわる」の過去形。
さらに程度が上がると「せわしゃった(おっしゃった)」となる。
「ぜんて」
”一体全体”、”だいたい”、”そもそも”というような意味が混じった感じ。
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「そ」

「そ〜さ〜ぁ」
”そおなんですかあ”と相づちをうつ。
「ぞうさもねぇ」
”簡単にできる”という意味。「造作ない」が変化した。
ぞうさない:面倒でない。わけはない。たやすい。広辞苑
「そうどこじゃねぇ」
”それはいいことだ”と賛成する。
「○○ぞお」
”何々”の”々”に相当する複数を示す言葉。
「誰ぞおと行く(誰と誰と行く)」、「どこぞお行く(何処と何処へ行く)」、「何ぞお食う(何と何を食べる)」
「そこね」(【そ】を高く【こね】を下げる)
”そこら”、”そこそこ”。
「昔の子どもは、十やそこねで紡績に行かされたもんだ」 (昔の子どもは、十歳そこそこで紡績工場へ働きに行かされたものだ)
「ぞぜっちゃべり」
子どものような甘えた話し方。
「ぞぜる」
”甘える”、”だだをこねる”
「そつがでる」
”無駄が出る”という意味。
「今年は台風のせいでリンゴはえっぺそつが出た(たくさん無駄が出た)」
そつ:
1)むだ。無益。
2)てぬかり。ておち。「朝顔や人の顔にはそつがある」(一茶)、そつが無い。広辞苑
「そっくりけえる」
”反り返る”こと。
「そべる」
”寝そべる”、”横になる”
「くたびれたからちょっとそべらず」(疲れたのでちょっと横になって休みましょう)
「・・・そもう」
”・・・と思う”。「・・・と、そう思う」が訛った感じ。
「あそこの家にはきっとお宝があるそもう(あると思う)」
「おらそんなことねえそもう」(私はそんなことないと思う)
「そんなどこじゃねぇ」
”それどころではないですよ”。「それどこじゃねえ」ともいう。
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