久保の家
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暮らしのことば

食にまつわることば

「あ」(18) 「か」(18) 「さ」(6) 「た」(10) 「な」(6) 「は」(8) 「ま」(4) 「や」(3)

おことわり:ことばの解釈や用法、語源などは、あくまでもこのページの管理者が勝手に判断したもので、学術的な根拠に基づくものではありません。


「あ」

「あじいい」
”おいしい”。「味良い」
「このうどん、味いいなあ」などと使う。
直接的で、文化がまだ熟していない感じがする表現の一つ。
「あらいのけ」
食器などの”洗い物”あるいは”食器洗い”をいう。
語源は不明。
「いしっかてぇ」
”石のように堅い”。「石堅い」が訛った。
古くなった餅の端が堅くて歯が立たないときなどに使う。
「いなごのつくだに」
いなご(蝗)の佃煮
「いなご」は「蜂の子」「ざざむし」と並ぶ信州の3大珍味のひとつ。(ただし、北信州高山村には「ざざむし」が取れるような川がないため、どんなものかわからない)
手ぬぐいを二つ折りにして両端を縫い、竹筒に縛り付けて捕獲袋にする。
朝早く田に入り、いなごの動きが鈍いところを素早くつかまえて竹筒に入れると、袋の中に入って出てこれなくなる。袋がいっぱいになったら竹筒をはずして、袋の口を縛る。
袋ごと熱湯をかけ、取り出して佃煮にする。
日が昇って気温が上昇するといなごの動きが活発になって、つかまえにくくなる。
余所の田に黙って入ると怒られるので、稲を倒さないようにしてつかまえるのが最低の常識です。
「いなじょっぺ」
非常に”塩辛い”こと。
「この鮭はいなじょっぺな」(この鮭はやたらに塩辛いね)
「うでる」
”茹でる”。
「餅米蒸かしたお湯沸いてるんでほうれん草うでとけや」 (餅米を蒸かしたお湯が沸いているので、ほうれん草をゆでておいてください)
うでる【茹でる】:「ゆでる」に同じ。広辞苑
「うんまい」
”おいしい”。”うまい”がちょっと訛った。「うんめぇ」「うめぇ」ともいう。
「ええのける」
”気が抜ける”、”辛味が薄れる”、”刺激が少ない”といった意味。
ええのけた(気の抜けた)ビール」などという。
「えのぬける」「えののける」「えんのける」など、変形が多い。
「おおまくらい」
”大食漢”
「大飯(おおまんま)くらい」から変化したらしい。
「おかざり」
鏡餅のこと。”お飾り”
おかざり:
1)神仏の前の飾り付け、また、そなえ物。特に鏡餅。
2)正月のしめかざり。広辞苑
「おごっそ」
”ご馳走”。 ”おご馳走”から変化した?
「おごっつぉ」ともいう。
おごっそ」をいただいたら「おごっそぉ」といって帰る。
「おざんざ」
”うどん”のこと。
釜揚げや煮込みなど。
「おつけ」
”味噌汁”のこと。漢字では「御付」。ていねいになると「おみおつけ」。
「味いい」の直接的な表現に対して、奥ゆかしい感じがする。
おつけ:(女房詞。本膳に付け添える意)
1)吸物の汁。
2)みそ汁。おみおつけ。
3)麺類のつけ汁。広辞苑
「おつけのみ」
味噌汁の具のこと。「御付の実」。
「おつよ」
味噌汁のこと。「お汁(つゆ)」が訛った。
「おてしょ」
漢字では「御手塩」。”小皿”のこと。
「お菜をおてしょに取ってやってくんない」(野沢菜を小皿にとってお召し上がりください)
おてしょ:(女房詞) 手塩皿テシオザラ広辞苑
「おはづけ」
”野沢菜漬け”のこと。
信州では「お菜」といえば「野沢菜」を指す。
「おりこぼし」
”お茶殻”を入れる容器のこと。
信州人はお茶ばかり飲むので、お茶殻を入れる容器を脇に置いておく。
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「か」

「かう」(【か】が高く【う】を下げる)
”おかずにする”こと。
「おなかってめしくった」(野沢菜漬けをおかずにしてご飯をたべた)
「かしゃもち」
”柏餅”のこと。
柏餅を包むのは「かしゃっぱ(柏葉)」という。
「かっこむ」
”急いで食べる”こと。
”(食べ物を)掻きこむ”からの変化か。
「いますぐかっこんじゃうからちょっとまっててくんない」
(今すぐに食べ終えますから、ちょっとお待ちください)
「かびらかす」
食べ物が”黴(かび)る”こと。
「餅をかびらかした
「かぶっつら」
切り餅の中にもち米の粒が全部つぶれずに少し残っていて、滑らかでない状態をいう。
もち米が蒸し足りないとなりやすい。
転じて、表面がでこぼこしていることも「かぶっつら」という。「このごろ松井選手の顔がかぶっつらでなくなってきた」
「かんます」
1)”かきまわす”こと。
 「野菜が煮えたら鍋に味噌を入れてかんましてくんない(かき混ぜてください)」
2)”混乱させる”という意味もある。
「きじょよ」
”生醤油(きじょうゆ)”が訛った。
「きっぱし」
”切れ端”のこと。
”のし餅”を切って”切り餅”をつくるときに、切れ端が出る。これを「きっぱし」あるいは「きっぱし餅」という。
暮れについた餅は、年内は「きっぱし」だけ食べ、正月になってはじめて四角い餅を食べる。
「きびしょ」
”急須”のこと。
「きびす」ともいう。
「ぎょる」
”調理する”、”料理する”。
「新巻鮭をもらったんで、爺ちゃんにぎょってもらう(調理してもらう)」
「くしがき」
”干し柿”のことを「串柿」という。
くしがき【串柿】: 渋柿の皮をむき、串にさして干し、甘くしたもの。広辞苑
「くちい」
”満腹”の状態をいう。「はらくち」ともいう。
「くちひんまがっちまう」(【ひ】を上げる)
分不相応に高価なもの(高級なもの)を食べるときに発することば。「口がひん曲がってしまう」が訛った。
「一個で何千円もする本マグロの寿司なんか食べたら、口ひん曲がっちまう」
「くし」
”菓子”のこと。
旧仮名使いで「クワ」と書くことばと「カ」と書くことばを使い分ける発音がまだ残っている。
「花林糖(りんとう)」など。
「こおふける」
食べ物にカビが生えること。
「如来さんにあげておいたお飾りがこおふけた」(仏壇にお供えしておいた鏡餅にカビが生えた)
「こそっぽい」
”舌触りがざらざらする”、”滑らかでない”。反対は「すべっけ」。
「土筆(つくし)はこそっぽくてあまりうんまかね」(土筆はざらざらしてあまり美味しくない)
「こびれ」
”小昼(こひる)”が訛った。「おこびれ」ともいう。
農作業の休憩時にたべる間食。”おやつ”よりも腹ごしらえの度合いが強い。
「こわい」
1)”濃い”、”こくがある”
「この牛乳、とってもこわいね(濃いね)」などと使う。
2)”やわらかい”の反対。”強い(こわい)”。野菜などの繊維が硬い場合に使う。
「このお菜こわいな(硬いな)」
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「さ」

「さまかす」
”冷ます”こと。
「しゃじ」
”匙(さじ)”が訛った。
「しょおじょっぺ」
塩加減のきついこと。
「じょおばこ」
”重箱(じゅうばこ)”が訛った。
「しょっぺもん」
”塩辛いもの”が訛った。
塩辛い食べ物のことを言う。
「すうけ」
”酸味”のこと。
酸い気(すいけ)が訛ったらしい。
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「た」

「た〜くさん」
”十分いただきました”、転じて”ごちそうさま”という意味。
「たくさんいただきました」が省略されたらしい。
「もうた〜くさん」(もう十分いただきました、ごちそうさま)
「たけのことり」
北信州で「竹の子」というと根曲がり竹(チシマザサ)の竹の子を指し、山に行って竹の子を採ることを竹の子取りという。
乱獲で発生が減少していることと、心ない入山者で山が荒らされることから、各地で竹の子取りが禁止されており、入山料を払っても竹の子取りができる高山村に集中している。
たくさん採ろうと無理をして奥に入り、道がわからなくなって遭難する人が後を絶たず、ときどき死者まで出る。
命をかけてまで採りに行きたくなるほどおいしく、特に、採ってすぐに缶詰の鯖の水煮と一緒に煮て食べる「竹の子汁」は絶品。
「たまり」
”醤油”のこと。
”溜り醤油(たまりじょうゆ)”のことを指すこともある。
たまり【溜り】:醤油の一種。原料の大豆の割合を多くし、食塩水を少なくして醸造したもの。醤油より濃厚。愛知・岐阜などの特産。 広辞苑
「たらかす」
”垂らす”こと。
「で〜」(【〜】を下げる)
食べ物などの”持ち”のことをいう。共通語の「出(で)」は短いが、「で〜」と延ばす。
硬い飴玉はいつまでも口の中で溶けず「で〜」がある。
おいしいものは「で〜」がなく、すぐになくなる。
で:(多く動詞の連用形に付いて) 分量。かさ。また、その物事をするのに費やす時間・労力。「読み出がある本」「使い出がない金額」「出のある料理」広辞苑
「てっこもり」
ご飯などの”大盛り”のこと。”天こ盛り(てんこもり)”が訛った。
「丼にまんまてっこもりにして食べた」(丼にご飯を山盛りにして食べた)
てんこもり:食器に食物(特に飯)をうずたかく盛ること。山盛り。広辞苑
「てっぱ」
酒屋の店先で枡酒(今ならコップ酒)を一杯飲むこと。語源は不明。
「掛け(付け)で飲むのでその時はいいが、あとでまとめて請求されるのが怖い」とは上戸の弁。
「とっちゃなげ」
”すいとん”のこと。
捏ねた小麦粉を取っては鍋に投げ入れることから名付けられた。
「どんけつなし」
果物の糖分や酸味が少なく、おいしさが薄いことを表すことば。
日当たりが悪かったり、本来、成らすべきではない枝にできた果実がなりやすい。
「とんます」
”裏返す”、”ひっくり返す”。
「早くとんまさねと餅焦げるど〜」(早く裏返さないと餅が焦げますよ)
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「な」

「にえずく」
煮えたぎった状態。「煮えずく」。訛ると「ねえずく」。
猫舌のひとは「にえずく」は食べられない。
「にじき」
1日に食事を2回しかしないこと。漢字では「二食」。
長野市の老舗の商店では、元旦は朝にお雑煮をいただき、お昼は食べず「二食」だったそうだ。
「ねぼして朝飯食べねでにじきでなんかいるもんだねぇ」(寝坊して朝ご飯を食べないで2食だけでいる、などということは良くない)
にじき:1日のうちに食事を2度だけすること。広辞苑
「ねぐさい」
漢字では「寝臭い」。腐敗しかけた食物から発する蒸れた臭いの表現。
ねぐさい:麹コウジが熟して一種の臭みが出ている。食物の腐ったようなにおいがする。広辞苑
「ねっとこ」
どろどろの状態をいう。
「ひんのべ」は時間がたつと汁が吸われてねっとこになる。
「のっくむ」
”飲み込む”こと。
すんなり飲め込めないものを、多少無理して飲み込む感じがする。
「のどこくる」
食べ物の水分が少なく、のどをスムーズに通過しないことをいう。「咽(のど)こくる」。
「何も飲まないで乾パン食べたら、咽こくった
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「は」

「はいも」
”里芋(さといも)”のこと。語源は不明。
広辞苑には里芋の別名に「ハタケイモ」があるので、縮んだのかもしれない。
「はちのこ」
漢字では「蜂の子」。蜂の幼虫のこと。特にことわらない限り、”じばち(クロスズメバチ)”の幼虫のことをいう。
蜂の子」の佃煮は、イナゴ、ザザムシと並ぶ信州の3大珍味の一つで、昭和天皇も好まれたそうである。
土の中に円盤状の巣を何段にも積み重ね、その中で卵から幼虫を育てるので、巣が大きくなった頃を見計らい、煙幕で働き蜂をぜんぶ気絶させてから巣を掘り出す。
巣は六角形の部屋に仕切られ、まだ幼虫がいる部屋は膜で覆われているので、膜を取り除いてから幼虫を取り出す。すでに成虫になった部屋は膜がなく、空になっている。
幼虫だけでなく、透き通った蛹(さなぎ)や、成虫の姿のものもかまわずに取り出すが、小さいので結構手間がかかる。
全部取り出したら、佃煮にする。
田の土手にある巣を掘ると土手が弱くなって崩れやすくなるので、自分の家の田以外は見つけても掘らないで田の所有者に連絡し、もし承諾が得られたら、堀ってから土手が崩れないように処置をする。
「はぬかりする」
歯にくっつく。
「できたばっかのやしょんまは、歯ぬかりする」(できたばかりのやしょうまは、歯にくっつく)
「はらくち」
”おなかがいっぱい””満腹”という意味。
単に「くちい」ともいう。
「さんざおごっそんなったんではらくちや」(たくさんご馳走になったので、おなかがいっぱいですよ)
「はんごろし」
漢字では「半殺し」。ぼた餅などを作るとき、もち米を完全につぶさず、粒が半分残る程度につぶすこと。全部つぶすことは「皆殺し」という。
一晩の宿を求めてきた旅人(僧だったかな?)に、ぼた餅でもご馳走してやろうと台所で「半殺しにしようか、それとも皆殺しにしようか」相談していたら、隣の部屋でそれを立ち聞きした旅人が「殺されてはかなわん」とあわてて逃げ出した、という有名な民話があった。
「ピスケット」
”ビスケット”のこと。
「ひね」
漢字では「陳」、「老成」。”古くなった”という意味。「ひね飯」
転じて”前の”とか”旧の”として使うこともある。「ひねの役員(旧役員)」。
ひね:
1)前年以前にとった穀物。旧穀。「ひね米」
2)古びたこと。また、そのもの。
3)おとなびていること。老成していること。広辞苑
「ほどっくべ」
囲炉裏の灰の中で蒸らして焼いた”おやき”のこと。
灰を軽く払ってから食べるが、あわてて食べると上あごをやけどする。
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「ま」

「まるめる」
「おやき」をつくることを「おやきをまるめる」という。
冠婚葬祭には、親戚のおんなしょ(女性)が総出でおやきまるめを手伝った。
「まんま」
”ご飯”、”食事”のこと。
丁寧になると「おまんま」
まんま【飯】:(幼児語) めし。御飯。広辞苑
「むぎきり」
「冷麦」の材料を「むぎきりと呼んでいる。「麦切」
むぎきり:大麦の粉を切麦のように作って短く切ったもの。広辞苑
「めんるい」(【め】を低く【んるい】をやや上げる)
狭い意味で「冷や麦」のことを「めんるい」といっている。
少し広い意味では「うどん」や「そーめん」も含めるが、「蕎麦(そば)」は含んでいない感じがする。
更に広い意味で「ラーメン」や「スパゲッティ」は、「麺類(【め】が高く【んるい】を下げる)」であっても「めんるい」とはとても思っていないらしい。
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「や」

「やきげえし」
焼いた餅が冷めた後、もう一度やいたもの。「焼き返し」の訛り。
「やっこい」(【こ】を上げる)
”柔らかい”が訛った。さらに訛ると「やっけぇ」となる。
「よーめし」
”夕食”、”晩御飯”のこと。夕飯(ゆうめし)が訛った。
「遅くまでてんだってもらったんでよーめしいっしょにやっとくらい」
(遅くまでお手伝いしていただいたので、夕食を一緒に召し上がってください)

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