久保の家
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北信州のはなしことば 「た行」

「た」(26) 「ち」(14) 「つ」(16) 「て」(23) 「と」(19)

おことわり:ことばの解釈や用法、語源などは、あくまでもこのページの管理者が勝手に判断したもので、学術的な根拠に基づくものではありません。説明が不適当だったり、間違っているものがありましたら、ご容赦ください。

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「た」

「たあくらたあ」
できもしないような話、またその話をする当人。”おおぼら”。
たあくらたあこいてる」(訳も分からないことを言ってる)
もとのことばは「たくらだ【痴・田蔵田】」らしい。
たくらだ:(麝香鹿(じゃこうじか)に似た獣で、人が狩る時、飛び出して来て殺されるという)自分に関係のないことで愚かにも死ぬ者。ばかもの。うつけもの。広辞苑
「・・・たい」(【た】を上げ【い】を下げる)
”・・・なさいな”。
「泊まって(い)ったい」(泊まっていきなさいな)。「休んで(い)ったい」(休んでいきなさいな)。「休憩したい」(休憩しなさいな)
「・・・ない」(【な】を上げ【い】を下げる)と同じ意味になる。
「休憩しない」(休憩しなさいな)
「・・・だい」
”・・・なさいな”。
「休んだい」(休みなさいな)。
「・・・ない」が詰まって濁音になったらしい。
「だいもち」
財産をたくさん保有している家や人のこと。
”身代持ち”からの変化か。
「たかる」
何かの周りに人が大勢集まって作業しようとしていると「大勢たかって」という。
たかる【集る】:
1)寄り集まる。
2)虫などが集まりつく。むらがりとまる。広辞苑
「たける」
1)借金が嵩むことを「借金をたける」という。
2)高いところなどに物を取りつけることを「物をたける」という。
  背中に虫が付いていると「虫をたけている」という。
「だしあれ」
突然のにわか雨のこと。
「たたる」
”建つ”こと。「建たる」。
「男の子が産まれたんで、鯉幟の竿がたたった(建った)」
「たっけに」
”真っ直ぐに”という意味。
「あのやろあんなたけとっからたっけに滑って降りてきたせうで。」
(あの野郎、あんなに高いところから真っ直ぐに滑って降りてきたそうですよ。)
「たっこくる」
勢い良く薪をくべて火を焚くこと。
「だっちょもねえ」
”つまらない”、”くだらない”という意味。
”埒も無い(らちもない)”が訛った「らっちょもねえ」 が、さらに訛ったらしい。
「〜だで」
”〜だから”という意味。
「あしたはめしめ仕事するんだで、今日は早くけえらず」(明日は朝食前に仕事をするのだから、今日は早く帰りましょう)
「たてめ」
”上棟”、”棟上(むねあげ)”のこと。「建前(たてまえ)」が訛った。
「たぬき」
”ゴム風船”のこと。腹をふくらませている置物からの連想か?
「〜だねか」
”〜ですよ”という意味。 「〜だねかい」
「そりゃあ違うだねか」(それは違いますよ)
「たぶたぶ」
”脹脛(ふくらはぎ)”のこと。
「歩きすぎてたぶたぶこおりおきた」(歩きすぎたので脹脛が痙攣した)
「だまくらかす」(【だ】が低く【まくらか】が高く【す】が下がる)
”騙す”こと。「だまかす」ともいう。
だまくらかされてたけえもん買っちまった」(騙されて高価なものを買ってしまった)
「たまげる」
”驚く”、”びっくりする”。
「おどける」とほぼ同じ。
たまげる:(魂が消える意から) 非常に驚く。びっくりする。たまぎる。広辞苑
「ため」
「溜」。”尿溜(にょうだめ)”のこと。
「ためる」(【め】を上げる)
”狙いを付ける”こと。
た・める【矯める】:
1)まがっているのをまっすぐにする。また、まっすぐなのをまげる。
2)改めなおす。正しくする。
3)いつわる。曲げる。付会する。
4)ねらいをつける。ねらいをつけて放さない。ねらいみる。広辞苑
「だめだしなあ」
”駄目だからなあ”、”駄目ですよねえ”
「だらい」
低速で進む様子をいう。”ゆっくり”に近い感じ。”だらだら”と関連がありそうだが、詳細は不明。
「前の車がだらく(ゆっくり)動いてるんで、追い越して見たら年寄りの運転だった。」
「だれだしやぁ」
「誰でしょうねえ」、「どなたですかねぇ」という意味。
「あんな真っ暗ん中歩いてったのだれだしやぁ」(あんな真っ暗な中を歩いていったのは誰でしょうねえ)
「だれぞお」
「誰と」、「誰が」という意味。
だれぞお一緒に出掛けたんだ」(誰と一緒に出掛けたんだ)
「・・・だんか」
”・・・でしょう”、”・・・ですよねえ”といった意味。
「たんと」
”たくさん”、”たんまり”。
「こないだ孫が旅行に行くせうんでこづけたんとくれてやった」
(このあいだ孫が旅行に行くというので、小遣いをたくさんあげた)
たんと: 1)数量の多いさま。たくさん。どっさり。たんまり。 2)程度の甚だしいさま。広辞苑
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「ち」

「ちーしむ」
”内出血”すること。「血が死ぬ」が訛ったか「血染む」のことか?
「すねぶつけたらちーしんでぶすと色になったんで蝮酒(まむしざけ)つけたらじっき直った」(脛をぶつけたら内出血して紫色になったので蝮酒をつけたらじきに直った)
「ちーだらまっか」
”血だらけで真っ赤”という意味。
「包丁で指切ってちーだらまっかんなった。」
「ちが」(【が】を上げる)
”血”のこと。「血が」
「蚊に血が吸われた」
「ちくせぇ」
”小さい”。「ちんけぇ」ともいう。
ちくせぇなりしてるのに力は強い」(小さい体をしているのに力は強い)などと使う。
「ちったぁ」
”少しは”。「ちょっとは」から変化した?
「ちっと」
”少し”。”ちょっと”が訛った。
「お祭りにはちっとばか(少しばかり)小遣いもらってお宮へ行ったもんだ」
反対は「えっぺ」
「ちびて」
”冷たい”が訛った。
ちびて手ぇして、どこで遊んでた」(冷たい手をして、いったいどこで遊んでいた)
反対は「のふて」(暖かい)という。
「ちゃんちゃん」
”ちゃんちゃんこ”のこと。
ちゃんちゃんこ:(子供用の)袖なし羽織。多く綿入れで防寒用。そでなし。広辞苑
「ちゅうかん」
”じゃんけん”のこと。
ちゅうかんほい」でじゃんけんを始めた。
京都の子どもが遊びに来たときに、「じゃんけんでーほーいっ」と優雅に始めたのを見て、山の子どもは文化の違いを実感した。
「ちょっきり」
”ちょうど”、”ぴったり”。
「拾った栗を数えたらちょっきり(ちょうど)100個あった」
「ちょっくれ」
よい意味でも悪い意味でも”いい加減”。中くらい。「ちょっくん」ともいう。
「七夕用にちょっくれな竹を斬ってきた」(七夕用にちょうどいい竹を斬ってきた)
ちょっくれ野郎」(いい加減な奴)
”中くらい”あるいは”ちょうどいいくらい”から変化した?
「ちょっけはやい」
”機敏”、”手が速い”
「ちょび」
子どもがちょろちょろすること。あるいはその子どもを指す。
「ちょんこづく」
”お調子に乗る”、”調子づく”
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「つ」

「つかいんぼ」
”突っ支い棒(つっかいぼう)”のこと。
「台風来るんでリンゴにつかいんぼした」
つっかい【突っ支い】: 物にあてて支え保つこと。また、その支えに使う柱や棒。つっぱり。支柱。「突っ支い棒」広辞苑
「つく」
判子を”押す”こと。
「宅急便きたんで判子ついてやれや」(宅急便がきたので判子を押してやってください)
「つぐら」
昔の子どもは、稲わらで編んだ「つぐら」に押し込められて育った。
つぐら:わらを編んで作った器。保温のため飯櫃(イイビツ)を入れ、また幼児を入れておく。いずめ。広辞苑
「つっかけ」
”サンダル”や”スリッパ”のような履き物をまとめていう。
「つっけーす」
”突き返す”こと。
「つっこくる」
”突っつく”こと。
「つっつきおとす」
”突き落とす”こと。
「つっとす」
”突き刺す”こと。
「つまんね」
”詰まらない”が訛った。
「つぼめる」
漢字は「窄める」。”すぼめる”こと。
「傘をつぼめる(すぼめる)」
つぼめる【窄める】: つぼまるようにする。すぼめる。広辞苑
「つめくる」
”抓る(つねる)”、”抓る(つめる)”
「つめつける」ともいう。
「つめっかく」
”爪で引っ掻く”
「蚊にくわれたとこがかいいんで爪っかいたら血が出た」(蚊に食われたところが痒いんで引っ掻いたら血が出てきた)
「つめる」
漢字は「詰める」。
(戸を)「締める」「閉める(しめる)」、「閉てる(たてる)」「立てる」と同じ。
つめる:物を隙間に入れてあかないようにする。「戸を詰める」広辞苑
「つらっぱしねえ」
”厚かましい、恥を知らない” こと。
”面恥無い(つらはじない)”が訛った。
面恥無い:恥しらずである。広辞苑
「つるける」
”つりさげる”。「ぶるける」も似たようないいかた。
「つれ」
”仲間”、”同伴”。”連れ”
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「て」

「でー」(「でえ」)
分量やかさのこと。”出”が訛った。
「まあ、かてくてでーのある飴玉だこと」
(硬くて食べ出のある飴玉ですねえ)
「てーげ」(「てえげ」)
”大概(たいがい)”が訛った。
「てーしょ」(「てえしょ」)
”亭主””婿”のこと。→「おっか」
「でーじんこ」(「でえじんこ」)
”お大尽”のこと。たくさんの田畑や山林を所有しているお宅をいう。
「こ」は、”庫”なのか”戸”なのか、あるいは”家”なのかよくわからない。
「てーら」(「てえら」)
”平ら(たいら)”が訛った。
”真平ら(まったいら)”は「まってーら(「まってえら」)」となる。
「でかく」
”多大な”とか”多額の”という意味。
「株やってでかく損こいた」
(株をやって多額の損失を被った)
「でかさわぎ」
”大騒ぎ”、”にぎやか”、”混乱している”といった意味。「えらさわぎ」も同じ。
さらに程度が増すと「でっかさわぎ」となる。
「でかす」
”こぶ”や”吹き出物”を作ることを「でかす」という。「出来す」
「りんごの枝に頭はたっつけたらこぶでかした」(りんごの枝に頭をぶつけたら瘤ができた)
「てこ」
”手伝い”あるいは”助手”のこと。
「でこしゃこ」
”凸凹(でこぼこ)”していること。
「舗装が傷んできて道でこしゃこしてる」(舗装が傷んできて道路が凸凹になっている)
「・・・てせ」
”・・・てさえ”が訛った。
「米のまんま食ってせいれば仕事できる」(米のご飯を食べてさえいれば仕事はできる)
「・・・でせ」
”・・・でさえ”が訛った。
「イチローでせ取れねんだもん、ほかの選手じゃ取れっこねえやさ」
(イチローでさえ取れないのだから、ほかの選手じゃ取れっこないよね)
「てちかく」(【て】が高く【ちかく】は低い)
”手こずる”こと。”手張る”。逆は「はかいく」。
「でっけ」「でっけえ」
”大きい”。”でかい”が訛った。
さらに大きくなると「で〜〜っけ」となる。
「山へ行ってで〜〜っけ松茸採ってこらった」(大きな松茸を採っておいでになった)
「でっぱな」
”鼻水”のこと。
「ぼこでっぱな垂らしてたんでふきのはっぱでかんでやった」
(赤ん坊が鼻水を垂らしていたので、蕗の葉でかんであげた)
「てっぽぶち」
”鉄砲撃ち(てっぽううち)”が訛った。
「てばる」
”手こずる”という意味。
「てんこ」
ブリキの一斗缶のこと。
昔は家庭でも食用の菜種油を一斗缶で買っていたが、今はあまり見かけなくなった。
「てんじょ」
”天井”が訛った。
「てんだう」
”手伝う”こと。
「てんでに」
”一人ずつ”
てんでに:(「手に手に」の転)めいめいに。思い思いに。各自に。てんでんに。「てんでに勝手なことを言い出す」広辞苑
「てんでわれわれ」
”みんなが勝手に”という意味。「てんで我々」
「でんでんこぼ」
”肩車”のこと。語源は不明。
「てんみね」
”天辺(てっぺん)”、”頂上”
「はしごのてんみねから落ったけん、怪我しなかったかい」(はしごの天辺から落ちたけど、怪我しなかったですか)
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「と」

「・・・どー」
”・・・ですよ”。
「今夜はおらちもおやき焼くんどー」(今夜は我が家でもおやき焼くんですよ)
「そんなことせったってだめどー」(そんなこと言っても駄目ですよ)
「ど〜」(【〜】を下げる)
”どれどれ”という感じ。
ど〜、ちょっとみしてみー」(どれどれ、ちょっと見せてご覧)
「どぉ」
”公会堂”を省略していう。
どぉの裏のち」(公会堂の裏のお宅)
「どおぞ」
”土蔵”や”倉”のこと。順序が入れ替わった。
「あの家のどおぞにはお宝がえっぺへってるんだって」
(あのお宅の土蔵にはお宝がたくさん入っているんだそうだ)
「どづく」
”殴る”こと。
「とがめる」
傷が化膿すること。
「ときに」
1)”一時的に”、”とりあえず”。「ときにそこへおいとけや」(一時的にそこへおいておきましょう)
2)”ところで”。「ときに、今夜のおかずはなんだいやぁ」(ところで、今夜のおかずはなんですかねぇ)
「どきょ」
1)昆虫の”蛹(さなぎ)”のこと。
蚕(かいこ)の蛹は貴重なたんぱく源として食べていた。
2)肝(きも)のこと。
どきょ試し」(肝試し)
「とこば」
”理髪店”のこと。「床場」。「床場屋」ともいう。
とこば:髪結床(かみゆいどこ)。理髪店広辞苑
「としょり」
”年寄り”が訛った。
「とっこ」
”切り株”のこと。
「とっつかめる」
”つかまえる”こと。
「とっつく」
”取り付く”が訛った。
「背中に虫がとっついてる(付いている)」
「とねっこ」
”子牛”や”子馬”のこと。
「どのかん」
”どのくらい”
「目方はどのかんあるやぁ」(重量はどの位ありますかねぇ)。
「どびしゃれ」
材木などがすっかり腐食して使い物にならなくなっているときの形容。
「とびっくら」
”かけっこ(徒競走)”のこと。
「蒲公英に飛くらしたる小川哉」一茶
「とぶ」
漢字では「跳ぶ」。
運動会で「とべ!とべ!」と叫んでいるのは、「もっと速く走れ!」と激励しているので、「高く跳ねろ!」とは言っていない。
とぶ:走る。広辞苑
「とよ」
”樋(とい)”のこと。
昔は杉の丸太をくり抜いて樋を作り、川から水を引いた。
雨樋(あまどい)は「あまどよ」という。
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