久保の家
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「田で」

「あ」(7) 「か」(1) 「さ」(3) 「た」(4) 「な」(2) 「は」(4) 「ま」(4)

昭和56年までは水田も作っていましたが、国の減反政策とともに、米作りを止めています。
今は懐かしいことばです。

おことわり:ことばの解釈や用法、語源などは、あくまでもこのページの管理者が勝手に判断したもので、学術的な根拠に基づくものではありません。


「あ」

「畔切り(あぜきり)」
田の畔(あぜ)の表面の土と、生えている草の根を切り取る作業。
”畔塗り(あぜぬり)”しやすくし、草が生えるのを防ぐ。
「畔草刈り」
畔や土手の草を刈って、害虫の発生を防ぎ、稲の風通しをよくする。刈った草は家畜の餌にした。
傾斜地の棚田(たなだ)は土手の傾斜がきつく、面積も広いため、草刈り作業は今でも大変な仕事。
鎌で大きな田の畦草を刈っていると、端までたどりつくころには、最初の場所ではもう草が伸びている。
今はほとんどの家が刈払い機を使っているので、作業時間は大幅に短縮された。
「畔塗り」
畔際(あぜぎわ)だけ水をかけて土を柔らかくして泥にし、畔塗り専用の鍬(くわ)で泥を塗りつける作業。
畔から水が漏れるのを防ぐ。
畔シートやブロックの普及で、あまり見かけなくなった。
「畔豆(あぜまめ)」
畔で栽培する豆のこと。大豆が多い。
畔に棒で穴をあけ、豆粒を落として塞ぐ。
棒を回しながら引き抜くのが、畔を壊さないコツ。
少しの土地も無駄にしない百姓の知恵です。
「あらくれ」
「あらおこし」のこと。
あらおこし【荒起し・粗起し】:水田の土を大ざっぱに掘り起すこと。稲作の最初の準備作業。 広辞苑
「うる」
「うるち米」のこと。
「落ち口」
田の水を、用水路や下の田に流す場所。
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「か」

「かけ口」
用水路から田の中に水を取り入れる場所。
山の田では「かけ口」付近は水温が低いので、稲の育ちが悪いため、「うるち米」ではなく「もち米」を植え、「かけ口」から離れた場所に「うるち米」を植えた。
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「さ」

「すじ」
”種籾(たねもみ)”のこと。種籾を苗代に蒔くことを「すじ蒔き」という。
前夜、袋に入れた種籾を風呂に入れて発芽を促進し、消毒してから苗床に蒔く。
今は田植機専用の苗箱に籾を蒔いている。
「せぎ」(【せ】が高く【ぎ】を下げる)
田に水を引く用水路のこと。堰(せき)からの転か?
「せぎあげ」(【せ】【あ】が低く【ぎ】【げ】が高い)
春、水田の作業に入る前に、用水路の権利者が共同で行う清掃作業。たまった泥や石をさらい、枯れ草やゴミを燃やして、水が流れやすくする。
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「た」

「田植え」
苗を田全体に配っておき、畔の両側から張った糸に沿って苗を植え、後ろに下がりながら作業する。足配りに注意しないと、自分の足跡に植えることになってしまう。
地方によっては、あらかじめ筋をつけておき、その筋に沿って田植えをする方法がある。
苗を配らずに、腰に苗の入った籠を下げたり、前に進みながら植えていく地方もある。
親指、人差し指、中指の3本の指で苗を植えると同時に、苗の束を持った別の手は次の苗を繰り出して準備する。この動作が遅いと、「苗を数えながら植えている」と笑われた。
苗を縛っている藁は泥の中に埋めておかないと、風が吹いたとき、水に浮いた藁が植えたばかりの苗に当たって、苗が浮いてしまう。
1日中腰を曲げている仕事で、途中で腰を下ろして休むこともできない、もっとも厳しい労働の代表だったが、田植機によって多くのお百姓さんがこの作業から開放された。
「田ぁ掻き」
”代掻き”のこと。
田全体に水が行き渡り、土が水を含んだら、牛に”まんが(馬鍬)”を引かせ、土塊を砕いて泥にするとともに、全体を水平にならす。縦横、縦横とまんべんなく歩いた。
現在は、牛がトラクターに、”まんが”はロータリーに変わっている。
「田ぁぶち」
田の土を鋤(すき)で起こす(起耕)作業。牛に鋤を引かせて起こした。
今は耕耘機からトラクターに変わっている。
「土用干し」
湿田では、秋の刈り取り時期に水が溜まりやすく、作業しにくいため、真夏の土用に一端水を払って、水はけを良くしておく作業。
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「な」

「苗取り」
田植え用に苗間から苗を抜き取って準備する作業。
1把の苗は1本の藁で束ねた。苗専用の束ね方は、すぐに解けるので便利だったが、田植機の普及で利用することがなくなった。
「苗間」
田植え用に苗を育てる苗代のこと。訛って「ねえま」と呼ぶ。
寒冷地で苗を育てる「保温折衷苗代」という技術が開発され、収穫量の増大に寄与した。
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「は」

「はぜ」
はぜ 鎌や稲刈り機で刈った稲を束ね、木や竹の「はぜ棒」で組んだ「はぜ」に掛けて天日乾燥する。「はぜ」に藁を掛ける作業を「はぜ掛け」という。
台風で「はぜ」が倒され、家族総出ではぜ掛けしなおすこともあった。
コンバインの普及で「はぜ掛け」せず、乾燥機で乾燥すろことが多くなったが、天日乾燥は味がいいため、自家用米だけは「はぜ掛け」するお宅もある。
「鼻っ取り」
”田ぁ掻き”作業で、牛の進路を誘導すること、またその作業者。
まんべんなく代掻きを行うために、牛の鼻環に縛った竹竿を持ち、牛と平行に歩きながら、竹竿をあやつって牛を導いた。
大きな田では、土塊が水面下に隠れると目印がなくなってしまい、牛をまっすぐに歩かせるのが難しかった。
力のない女性や子どもでもできる仕事だったが、機械化により、牛とともに消えた仕事。
「ひい」
”ヒエ(稗)”が訛った。
ヒエ【稗】: イネ科の一年草。中国原産で、日本には古く渡来。種子はやや三角形の細粒。 強健なため、古来、救荒作物として栽培、粒を食用とした。 粒・茎葉は飼料としてすぐれているが、今は栽培が少ない。広辞苑
「ぼっち」
ぼっち 束ねて転ばないように立てて乾燥するものを「ぼっち」という。
稲藁の場合は特に「藁ぼっち」という。
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「ま」

「水見(みずみ)」
田の水位を見て、調整すること。
「水をかける」
用水路から田に水を入れること。
「水を払う」
田の「落ち口」をあけて水を流すこと。
「水をはる」
田の全面に水を行き渡らせること。
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